モジュラー群に関する保型関数j(z)に対して、アトキンの方法で2進的な保型形式を構成し、それについての興味ある性質を見つけて、"On 2-adic modular forms"の題でKyushu J.Math.で発表した。2進的な保型形式は、レベル2の保型関数f(z)で無限遠点で1位のゼロ点を持つものにヘッケ作用素U(2)のべき乗作用をさせて得られるf(z)の多項式を利用して、係数が2進数であるようなfのべき級数として構成することができる。この係数の2進的な位数の評価が具体的な形で得られることを示せた。f(z)のU(2)のnべき乗作用を調べるには、f(z)のnべき乗にU(2)を作用して得られる多項式S(n)を調べることから攻める。S(n)のf(z)の多項式の係数の2進的なよい評価を得るための新しい方法を今回発見できた。この多項式のk次の項の係数をこの評価で得られる部分を2のべき乗として取り出し、残りの部分が定めるnの関数はnの多項式になる。この多項式を今回具体的に書き下すことに成功した。それから、全てのkについて、nが因子として必ずあることが証明できた。この方法でモジュラー群以外のフックス群のいくつかについて、そのマッカイ・トンプソン級数からアトキンの方法で2進的な保型形式が構成できることを示せた。論文で示した2進的な保型形式に関する性質を、j(z)からアトキンの方法で得られる3進的な保型形式についても成り立つことを実験的には確かめることができた。この3進的な保型形式はレベル3の保型関数g(z)で無限遠点で1位のゼロ点を持つものにヘッケ作用素U(3)のべき乗作用をさせて得られるg(z)の多項式を利用して係数が3進数であるようなgのべき級数として構成することができる。この係数の3進的な位数の評価を実験では具体的な形で得られることを示せたがまだ証明はできていない。
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