研究概要 |
Σは非特異射影曲面,SはΣの2次被覆とし,f:S→Σは被覆写像とする.Σ上の既約な曲線Dはfによる引き戻しが2つの既約成分に分解するとき,分解曲線という.本年度は,Galois分岐被覆の構成問題とそのザリスキ・ペア研究への応用を見込んで,主として分解曲線の研究を以下の設定で行った: Σは次数nのHirzebruch曲面(nは偶数),SはΣのdisjointな2つの切断で分岐する2次被覆とする(分岐因子は自己交点数が-nの切断Δ_oと,これに交わらない切断Δになる).DがΣ上の既約曲線で,因子(2g+1)△(gは非負整数)に線形同値な既約曲線とする.さらに,g=1のときは,Dの特異点は高々単純特異点であり,gが2以上ならDの特異点は高々nodeであるとする.XはΔ_oとDで分岐する2次被覆とする,Xには種数gのファイバー空間の構造が自然に入る.J_xで,Xの生成ファイバーのヤコビアンを表す.以上の設定のもと,「Dがfに関して分解曲線になるか否かは,J_xのMordell-Weil群の言葉で記述できる」というある種の相互法則を得た.この主結果を,非特異平面2次曲線に沿って分岐する2次被覆に関して分解する曲線の研究に応用し,次数が4以下の曲線の分解の様子について詳細な研究を行い,ザリスキ・ペアの例を得た.最初の主たる結果は,プレプリントSplitting curves ona ratinal ruled surface,the Mordell-Weil groups of hyperelliptic fibrations and Zariski pairsにまとめた,また,後者の応用に関する論文はGeometry of irreducible plane quarticsand their quadratic residue conicsとしてまとめ,研究集会"Singularities in Aarhus"のproceedingsにprovisionally acceptとなっている.
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