研究課題
本研究の目的は、符号理論からの成果を応用して、ある種の頂点作用素代数の分類を与えることである。その分類結果を通して、ムーンシャイン頂点作用素代数の位置付けを明らかにできると期待している。本研究の目的を達成するために、その出発点として、長さ48の立方重偶符号の分類を初期の目標として研究を行ってきた。ここでいう立方重偶符号とは、二元体上で定義された線形符号であって、すべての符号語のハミング重みが8の倍数となるものである。その成果として、本年度、計算機を用いた長さ48の立方重偶符号の分類に成功した。その結果は本研究の初期に定式化した仮説とは異なっており、結果的に次元の比較的小さな例外的な極大符号が存在するという事実を構成的に確認することとなった。この例外的な極大符号はグラフ理論の対象から自然に構成されるものと一致するという事実も研究を進める中で確認することができ、その性質についても多くの知見を得ることができた。この例外的符号の出現により、当初予想していたものよりも問題が拡大し、目標であったムーンシャイン頂点作用素代数の位置付けを見出すために、例外的符号に関連する頂点作用素代数の特定を進める必要が生じることとなった。また、有限の対象を扱う分野では、演繹的な操作や、帰納的な試行錯誤の結果得られる事実と同様に、異なる世界の係わりの中で突発的に現れる豊かな構造によって分野の研究が大きく進展するといったことが頻繁に見受けられる。本研究においては、共形場理論、有限群論、保型形式論、情報理論などが係わり合う中で突発的に捉えられる構造の出現も期待している。今回、発見した例外的な極大立方重偶符号は、まさにその顕著な例と思われる。
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Seminaires et Congres 21
ページ: 1-16
Cryptography and Coding, Springer LNCS 5921
ページ: 65-77
http://www.st.hirosaki-u.ac.jp/~betsumi/