研究概要 |
本年度は,直交群の直積で不変な超曲面であって第二基本形式の長さが一定な完備超曲面を構成するために,ある種の常微分方程式系の比較定理を新たに証明した. また、ユークリッド空間内の高い対称性をもった完備極小部分体の構成について以下の研究を行った.3次元ユークリッド空間内のグラフで表された極小曲面について成り立つ古典的なBernsteinの定理を高次元に拡張する研究については,ガウス写像の像がグラスマン多様体の中で十分小さければ成り立つ,というJost達の結果があった.それに対して,1998年に岡安によって与えられた定理は異なる条件であった.「n次元ユークリッド空間全体で定義されたp次元ユークリッド空間に値をもつ関数fのグラフが完備な極小部分多様体を表し,その法曲率が0で,さらに体積関数が1次以下の増大度をもつならば,fは一次関数になる」.この定理の体積増大度についての条件が必要であることを示す反例を構成することが必要であった.その例は,1999年度~2000年度基盤研究(C)研究課題番号:11640068,研究代表者:岡安隆「極小部分多様体に関するBernstein型定理の研究」において,構成された.しかし,cohomgeneity=2の各表現について極小部分多様体を表す個々の微分方程式は様々な形をしていて,解の存在を示すことは各方程式ごとにせざるをえないものであった.今年度の研究はこの点を改良したものである.微分方程式の変数を適切なものに取ることにより,第一積分をもつ微分方程式を得,さらにその第一積分を用いて,同値であるがより簡単な微分方程式に帰着させることができた.得られた微分方程式の大域的な解の存在は,Y.C.ChenとL.Y.Tsaiの2005年の論文から直ちに示すことが出来る.
|