研究代表者は昨年に引き続き、研究目的にあげた項目のうち、「微分方程式の幾何学的理論に関しての外微分形式系の研究」「微分式系の包合性の理解、同値問題の計算方法の習得」に主眼を置いて研究を遂行した。特に、G構造における正規化(normalization)と延長(prolongation)の正しいとらえ方およびG構造の考え方を「同値問題」に適用して計算を遂行する際のアルゴリズム的とらえ方と具体的手法を習得した。その上で、リーマン多様体の局所同値性、リーマン多様体のユークリッド空間への等長埋め込み問題における具体的な計算、ならびに二階常微分方程式の同値問題におけるトーションの計算の流れを確認した。これらは、決して新しい技法ではないが、この方面の研究において十分に理解し身につけておくべき重要な技法であり、以後の研究の遂行に不可欠なものと考える。 また、リー亜代数のリー亜群への積分可能性の研究への応用を念頭に置いて、Lieの基本定理とそれを拡張したCartanのLie擬群に関する基本定理の見直し、および、一般の外微分形式における積分多様体の構成に関して、「包合性の理論」のさらなる理解と修得を図った。さらに、連携研究員、研究分担者とのセミナー、討論を通じてウェッブ構造におけるGronwall予想、C^2におけるCR超曲面の同値問題への上記の技法の応用に関しての知見を深めた。一方、連携研究者の長瀬正義は、接触リーマン多様体(CR多様体における概複素構造の積分可能性の条件を外した多様体)上のKohn-Rossi Laplacianに付随した熱核の研究に関連して、CR多様体におけるTanaka-Webster接続の拡張を導入し、その曲率やトーションの記述に関して十分詳細な情報を得た。
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