研究分担者 |
坪井 俊 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (40114566)
中山 裕道 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30227970)
久我 健一 千葉大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30186374)
杉山 健一 千葉大学, 大学院・理学研究科, 教授 (90206441)
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研究概要 |
本年度は微分可能多様体上の接分布(積分可能か不可能かを問わない)に対する幾何学的エントロピーの新定義を確定させた.このエントロピーは1次元接分布(即ち,流れ)の場合にはよく知られている位相エントロピーに(本質的には)一致し,積分可能分布(即ち,葉層構造)の場合にはGhys-Langevin-Walczakの幾何学的エントロピーに一致するので,本結果はこれらのエントロピーの概念を積分可能とは限らない一般の接分布へ拡張したものといえる.この概念により積分不可能分布の複雑さを表す新しい量が得られたことになり,積分不可能分布の大域的性質の研究に役立つと期待している.これがどのような複雑さを反映するのかを調べることが今後の重要な研究課題である.このエントロピーは,昨年度の研究で示したように,全ての接触構造に対して消滅するが,本年度更に4次元多様体上の非アフィンなエンゲル構造Dに対しても全て消滅することを示した.ここでDが非アフィンとはDの導分布のカルタン特性系の全ての葉の射影構造の展開写像が円周へ全射になることである(本研究代表者による命名).一方で,非消滅エントロピーの具体例をアフィンなエンゲル構造に見出すべく議論を進め,分離集合に関して幾つかの性質を調べたが,残念乍ら完成までには至らなかった.しかし,力学系理論からの種々の結果を用いて上記考察をしている途上で,関連する結果として,区間力学系における単峰写像の極限集合に関する定理を得た.これは,学術誌への掲載が決定している.
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