研究概要 |
今年度の研究成果は以下の3つであった. トーラスによるハイパーケーラー商のトポロジーの研究をした.そのために、ハイパーケーラーモーメント写像のノルムの2乗がプロパーでないにもかかわらずモース関数として適用できるという仮説を立て,この仮説が正しいことを示そうとした.まず,トーリックハイパーケーラー多様体に対しては,この関数の精密な勾配評価を確立することにより,この仮説が正しいことを示すことができた.次の段階として,より一般のトーラスによるハイパーケーラー商に対して仮説が正しいことを示すことが重要である.そのために,上述の勾配評価を,より抽象化された視点から再構築することを行っている.全体的には,完成に近づいていると思われるが,まだいくつかの障害があり,研究を続行している. 1次元の複素円板上の楕円ファイブレーションで原点上に最も簡単な特異ファイバーがあるものの全空間上に Ooguri-Vafa 計量というハイパーケーラー計量が存在することが知られている.服部広大氏と共同で,この計量の拡張として,より複雑な特異ファイバーを持つ場合にハイパーケーラー計量を構成した. Mark Hamilton 氏と共同で,幾何学的量子化,特に,実偏極を複素構造のモジュライ空間の境界として定式化することを目標として研究している.グラスマン多様体,旗多様体などの具体的な空間に対して,実偏極と複素偏極の関係を詳細に調べた.
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