研究概要 |
シンプレクティック多様体を幾何学的量子化する際に偏極という付加的なデータが必要である.その中で,実偏極と複素偏極が重要である.これらの偏極はまったく見かけ上性質の異なるものであるが,それぞれの偏極を用いて量子化した結果は同じになる,という指導原理がある.複素偏極の1パラメーター族が与えらたとき,前量子直線束の各複素偏極に応じた正則切断がとれるが,複素偏極をそのパラメーターに関して極限をとったときに,ある実偏極に関するボーア・ゾンマーフェルト軌道と呼ばれるあるラグランジュ部分多様体に台を持つデルタ関数に収束してゆくとする.このとき,この複素偏極の族は上記の実偏極に量子レベルで収束するという.実偏極に対して,その実偏極に量子レベルで収束する複素偏極の族が存在することが示されれば,上記の指導原理は概念的に説明が与えられることになる トーリック多様体の場合には,その標準的な実偏極に量子レベルで収束する複素偏極の族がBaierらにより構成された.旗多様体にゲルファント・セトリン系と呼ばれる標準的な実偏極が存在するが,本研究では,この実偏極に量子レベルで収束する複素偏極を構成した.アイディアは,旗多様体のトーリック退化と,Baierらによるトーリック多様体の方法を組み合わせることであるが,組み合わせるために,Baierらの理論の枠組みを拡張することが必要になる.また,組み合わせるときに生じる誤差項の精密な評価をすることが必要になるが,これらを実行した.この結果はConvergence of Kahler to real polarizations on flag manifolds (preprint,34ページ)にまとめられた
|