研究概要 |
1.階数付きリー環とその表現を一つ与えるごとにそれに付随して微分分方程式系のクラスが決まる.ここを舞台にして,リー環,幾何構造,微分方程式が互いに緊密に関係する様々なおもしろい問題がいろいろ出てくる.これらの問題について,特に,階数付きリー環の表現に対して決まる線形微分方程式系のクラスにおける同値問題について待田芳徳(沼津高専)とB. Doubrov (ISLC)と共同研究を進め、ほぼ満足のいく一般理論を確立することができた.即ち,階数付きリー環が半単純なとき,その階数付きリー環の表現に対して決まる線形微分方程式系のクラスにおける同値問題を,代数的調和理論と外在幾何における動標構束の方法を用いて解決する理論ができた.またこれを通じて外在幾何と線形微分方程式系との緊密な関係も明らかになった.さらに,いくつかの具体例への応用を進めている.現在、これらの成果を論文にまとめつつある.また成果の一部はすでに内外での講演の対象となった(Univ. of Florence, CIRM, Institut Fourier, Banach Centre,東京理科大,沼津高専,名古屋大). 2.2008年7月には名古屋大学で「巾零解析への誘い」という題で集中講義を行い,2009年1月にはBanach Centreで巾零幾何から巾零解析について連続講義をし,また3月には巾零解析に関して学位論文を準備中のウイーン大学院生を数理研において指導した.最近内外で,少しずつ巾零幾何・巾零解析に対する関心が高まりつつある.こうした中で,"Nilpotent Analysis-Differential Equations on Filtered Manifolds"という題でモノグラフをまとめつつある.今年度中に終えることができなかったが,近いうちに完成させたい.
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