研究概要 |
19年度の研究目的は,一般ホモロジーおよびコホモロジー理論を展開する上でスペクトラムより使い易く,しかも理論的にもより優れた枠組みを構成するための基礎固めを行うことであった。そのために以下の三点を実施計画の柱として設定した。 1.コンパクト生成位相空間の基礎理論 2.連続関手による一般ホモロジーの表現 3.双変関手による一般コホモロジーの表現 この内,1については,当初の想定とは若干異なる形ではあるが非常に扱い易い位相空間の圏を構成することができた。すなわち,位相空間そのものには一切の制限を設けず,その代わりに連続写像の定義を通常より弱めることにより,コンパクト生成位相空間の圏とほぼ同様の性質を満たし,なおかつ,はるかに使い易い圏を構成することができる。これに関しては吉田耕平氏(岡山大学自然科学研究科博士後期課程在学)との共著論文を書き上げ,近く学術雑誌に投稿の予定である。さらに,この圏を用いることにより,2および3の計画も当初の想定よりも更に簡明な形で実現することが可能となり,理論的な面ではほぼ計画を達成することができた。しかしながら,具体例としてのカスパロフKK理論の書き直しには手がつかず,これは20年度の課題として持ち越すこととなった。
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