研究概要 |
本年度は,主として双変関手による一般コホモロジー理論の表現に関する研究に取り組み,大きな成果を得た。先ず,昨年度の研究成果の一つである連続関手の概念を,同じく昨年度の研究成果である数値的連続写像の概念を用いて書き直し,それがホモトピー群をとる操作を経由して一般ホモロジー理論を定義するための条件(『完全性条件』)を極めて簡明な形で与えた。次に,この連続関手の概念を一般化して,『双変連続関手』の概念を導入し,ホモトピー群をとる操作によってそれが一般コホモロジー理論を与えるための条件(『双完全性条件』)を定式化した。このとき,注目すべき点は,双変関手の共変部分は連続完全関手に他ならず,従って,ある一般ホモロジー論を与えていることである。すなわち,我々の方法は,一般コホモロジーを一般ホモロジーの双対概念として定義しようとするものではなく,一般ホモロジーと一般コホモロジーの両者を統合した双変理論(bivariant theory)として与えるものである。連続完全関手から連続双完全関手を構成する標準的な方法が存在し,これを用いて,よく知られた一群の一般コホモロジー理論を与える双完全関手の例を構成することができる。また,吉田耕平はチェック・ホモロジーおよびチェック・コホモロジーを定義する連続双完全関手を具体的に構成した。これは,連続完全関手から構成される類のものではない点で興味深く,さらに チェック理論のオリジナルな定義を眺める限り,それが連続双変関手で表現され得るとは考えにくいという点で,驚くべき結果であるといって過言ではない。
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