研究概要 |
3次元球面内の双曲型結び目に対する例外的デーン手術は,生じる3次元多様体のクラスに従って,可約手術,レンズ手術,ザイフェルト手術,トロイダル手術の4種類に分類される.可約手術は起こりえないと予想されているが,ケーブル予想とよばれる難問である.残る3つの例外的デーン手術に対して,これまでの研究を発展させることを目的とした. 本年度は,レンズ手術に関する研究を行った.レンズ手術を許容する結び目は,Bergeの結び目に限ると予想されているが,未解決である.最近,Bakerによって,Bergeの結び目は特殊な2つの族を除けば,minimally twisted five chain linkのデーン手術によって得られることが確認されている.そこでこの逆問題に取り組んだ.その結果,現時点では1つの制約のもとで,その絡み目からデーン手術によって得られ,かつ,レンズ手術を許容する結び目はBergeの結び目に限ることを証明できた.この成果は東京工業大学で開催されたワークショップの招待講演において発表した.Bergeの結び目は,代数的な議論に基づいて構成されたものであるが,本研究は,タングルに基づく幾何的な議論によっており,Bergeの結び目がなぜそのような形をしているのか,解明することに貢献したといえる.現時点で取り除けていない制約は自然な条件であり,その条件がレンズ手術にとって必然的であることを示すことが残された課題である.
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