研究概要 |
本研究では,軌道に沿って移動する間にどのくらい角度がひねられるかを調べ,周期点の存在を証明することを目標としている.これまでの研究で,多くの場合,角度が強くひねられると,周期点が存在することがわかった.そこで,本年度は,逆に周期点が存在しない例について,角度がどのように変化しているかを調べた. 始めに,周期点が存在しない低次元力学系では,その空間がどのようになるのかを研究した,具体的には,平面の同相写像における力学系について,その極小集合を調べた.極小集合では,すべての軌道が稠密になる.従って,どの点から動き始めても,極小集合のあらゆる点の近くを軌道が通過する.この点で,極小集合は(位相空間論の)等質性に非常に近い性質を持つと思われる.一方,位相空間論では非常に長い年月等質性について研究がなされてきた.特に,平面に埋め込まれた等質的な連続体の研究は非常に進んでいる.この研究を踏まえ,平面の同相写像の極小集合の位相的な特徴付けを行った.未だに,研究途中であるが,極小性と等質性に違いについて,いくつかの結果を得た.次に,極小集合がpseudo-circleになる場合について,軌道に沿った角度変化を研究した.ハンデルは,平面の微分同相写像で,その極小集合がpseudo-circleと呼ばれている集合になる例を初めて構成した.現在でも,平面の同相写像の連結な極小集合で,例外的なものはpseudo-circleと同相なものしか知られていない.そこで,この例について,角度変化を研究した,pseudo-circleはいたるところで曲がっている“異常な空間"で微分構造はない.しかし,この上に微分同相写像があるという不思議な現象が起きる.この原因を調べ,微分同相写像の明確な構成法,非デイスタル性の証明,射影流の極小集合の特徴付けを得た.
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