研究概要 |
カシャエフの提唱した結び目の双曲体積予想は、補空間に双曲幾何構造が入る結び目に対し、その色つきジョーンズ多項式の極限に双曲体積が現れる、という予想です。この予想はその後さまざまな形で一般化されましたが、 M. Okamoto, H. Murakami, J. Murakami, T. Takata, Y. Yokota: Kashaev's conjecture and the Chern-Simons invariants of knots and links, Experiment. Math. 11(2002),447-455 において、いくつかの結び目の色つきジョーンズ多項式に対する数値実験を経て、チャーン・サイモンズ不変量を含む自然な形が提唱されました。これを複素化された体積予想と呼びます。 これまでの体積予想の研究で、色つきジョーンズ多項式の極限に登場するポテンシャル関数と、双曲構造方程式や双曲体積との関係を明らかにしてきましたが、複素化された体積予想を証明するために必要なチャーン・サイモンズ不変量との関係だけは、手がつけられない状況が長く続いていました。 今年度の研究では、 C.K.Zickert ; The Chern-Simons invariantof a representation, preprint で与えられた、結び目のチャーン・サイモンズ不変量の組合せ的な定義を体積予想の研究に登場する四面体分割に適用し、ポテンシャル関数とチャーン・サイモンズ不変量の開係を明らかにすると同時に、ポテンシャル関数の変数の持つ幾何学的な意味も明らかにすることができました。これにより、ポランシャル関数を結び目の補空間の双曲構造の研究に応用できる素地も整い、今後の研究が大いに期待できます。 また、ジッカートの公式は、未知の量子6j記号の存在を示唆しているように見えることから、四面体分割を通じた三次元多様体の新しい 量子不変量の発見と、体積予想の三次元多様体への拡張に向けて、新しい方向性が見えてきたと感じています。
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