本年度は、C_n-moveと呼ばれる局所変形を通して、Vassiliev不変量を研究することを第一の目的とし、仮想結び目や空間グラフに対しても、局所変形やVassiliev不変量を用いて、その性質を調べることを第2の目的とした。 本年度の成果は、C_n-distanceとVassiliev不変量に関するものであり、堀内澄子との共同研究である。 C_n-moveは、Vassiliev不変量と密接な関係にあり、2つの結び目がC_n-moveで移りあうとき、必要なC_n-moveの最小回数はC_n-distanceと呼ばれ、距離関数となる。C_n-moveで移りあう結び目の集合に対し、C_n-distanceにより、距離空間の構造を入れ、結び目を中心とする球面を考える。2つの結び目が距離p離れており、その2つの結び目を各々中心とする球面の接点の結び目を考える。一般には、接点は1点からなると思われるが、C_1-distanceとC_2-distanceの場合、接点に無限個の結び目が存在することが知られていた。C_n-distanceによる距離において、任意の2つの結び目に対し、その結び目を各々中心とする球面の接点に無限個の結び目が存在し、更にその無限個の結び目は任意に与えたオーダーまでVassiliev不変量が一致するという条件も満たせることを示した。C_1-distanceとC_2-distanceの場合は、接点の無限個の結び目は更に多くの条件を満たすこともできる。現在はnが3以上のC_n-distanceの場合において、接点の無限個の結び目にどのような条件を更に課すことが可能か、考察を続けている。
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