研究概要 |
変形量子化を用いて具体的な非可換関数を構成した。すなわち,非可換な指数関数を定義し,これを用いて非可換なガンマ関数,ベータ関数,三角関数などを定義した。 また,代数的には同型であるが表示の異なる族を,変形量子化を用いて構成した。これは複素数をパラメータとする族である。パラメータのある範囲においては収束性の非常によい非可換指数関数が得られることが分かり,これを用いて非可換な楕円関数を構成しその関数等式について考察した。 二次式の非可換指数関数は分岐を持つことが分かっている。これが上に述べた種々の構成において,分岐,多価性を与えるもととなる。これについて具体的に調べた。たとえば,非可換指数関数を用いたラプラス変換により逆元が得られるが,一つの元に対して逆元が複数得られることが分かり,これにより一般には代数の結合性が破れていることが分かる。 非可換な二次式は特殊線形リー代数と同型なものを与えることは知られているが,非可換指数関数を用いてリー群に対応するものが構成できる。さらにこの部分群を構造群にもつ幾何的な対象を具体的に構成しその多価性について考察した。 このように変形量子化を用いることにより非可換な関数を具体的に構成し,具体例を得ることができる。それについて詳しく調べることは今後の研究において重要な指標となり,これが本研究に意義を与えていると思われる。また,これらの具体例は一般的な枠組みを考察する上で基本的なものとなり,その点に重要性を認めることができると思われる。
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