(1)平成16年〜18年度の科学研究費補助金(16540084)により4次元多様体上のベクトル束の接続のモジュライ空間の幾何的準量子化を行いこの空間が準シンプレクティク構造を持つことを示したが、その続きの研究として3次元多様体上のベクトル束の接続の空間を調べた。ここには自明でない準シンプレクティク構造は入らないが、よく似た構造がカルタン3形式に類似の形式により定義される。この接続の空間の部分空間として、この3次元多様体を境界とする4次元多様体上の接続の境界値のつくる空間がある。その上ではこの3形式は消えて準シンプレクティク構造が入りこれらの境界空間はラグランジュ埋め込みとなっていることが示される。この結果は論文として準備中である。 (2)平成19年度からの科学研究費補助金(19540104)による研究「ヤング・ミルズ接続の空間とその双対空間」に関して、筆者はこの対象をスピノール解析により研究して、調和解析の諸定理の類似を示したく思っている。4次元球面上のヤング・ミルズ接続の構成として知られているADHM構成は、トウィスター対応により3次元射影空間上の正則ベクトル束のモナド構成に帰着するか、またはその類似操作をスペクトラル列により行うか、いずれにせよ結果のわかりやすさに比べ大変理解しがたいものになっている。これをスピノール解析により透明なものとする、というのが筆者の着想で、大略の筋道はできたので各部の精密な命題化と証明を続けることになる。スピノール解析は多様体上の解析学と独立な発展をしてきたため、ドウラームコホモロジー理論などいくつかの理論はまだ完成してないが、その部分はほぼ完成させた。この理論に接続を合成した理論を次に行い、それらを上記の大略の筋道に適応させることにより、ADHM構成のスピノール解析による再構成ができる。
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