(1)幾何的量子化は、有限次元シンプレクティク多様体については精緻な完成を見たと言える.しかし物理学との関連において重要なのは、ゲージ場の量子化であり、無限次元の幾何的量子化となる。これについては80年代はじめにAtiyah-Bottが曲面上のYang-Mills理論の幾何的量子化を行っていたが、私は2006年に4次元多様体での、N>2の場合にSU(N)平坦接続の幾何的量子化を行った。4次元多様体でのSU(2)平坦接続はこのリー群の4次元基本群が消えないため困難があった。今回の研究において4次元多様体でのSU(2)平坦接続の幾何的量子化に成功した。これに付随して、3次元球面上のSU(N)カレント代数およびそのリー群の可環拡大の問題が1983年のMickelssonの先駆的な仕事に端を発して研究されてきたが、私は2004年にその精密化を行い4次元多様体へWess-Zumino-Witten理論を拡張した。この場合もN>2の場合のSU(N)カレント代数(とそのリー群)についてであったが、今回SU(2)カレント代数とそのリー群の可環拡大に成功した。 (2)4次元空間上のインスタントンの構成を与えるAtiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin構成は数学・物理での重要な研究が続けられているが、その理論にデータからインスタントンを構成する方法は数学的に平易であるにもかかわらず、与えられたインスタントンからデータを取り出す方法は複雑で背景の諸量について何が取り出されているのかがこれまで明確でなかった。私は90年代後半から2002年まで展開したディラック作用素の解析学を応用し、ポテンシャル論的に理解しやすい諸量を取り出すことができた。まだ厳密な計算を完成させていないがADHM理論が直感的にわかりやすくなった。
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