1.当該研究目的の「非双曲・非可逆離散写像に対する弱ギブス平衡状態の可逆拡張が、散逸現象を特徴付ける非平衡状態となる為の条件を明らかにする」に対しては、Gibbs entropyに関するRuelleにより提唱されたentropy productionの概念を、非可逆離散写像に拡張し、不変測度に対し定義される測度論的変換のentropyの概念をnonsingular測度のクラスに於いて一般化する事により、弱ギブス測度に関する散逸性を数学的に特徴付け、その成果を国際研究集会「Nonuniformly hyperbolic dynamics and smooth ergodic theory」に於いて発表した(2007年6月28日)。この結果から、非可逆離散写像の可逆拡張が散逸性を持つ為の条件がより明らかになり、非平衡状態を網羅する一般化された変分原理の定式化が可能となり、更にはPesin-Sinaiらにより定式化された、弱い双曲性しか持たないpartially hyperbolic systemに適合したhyperbolic u-Gibbs測度と弱Gibbs性を持つエルゴード的不変測度の可逆拡張の関連性が期待される。 2. 当該研究の目的のひとつである「複雑系における間欠性の統計解析」に関しては、マルコフ性が崩れた可算生成分割を保持する区分的に滑らかな力学系がindifferent periodic pointを持つ時、観測関数の時間相関関数が多項式的振る舞いをする為の十分条件を明らかにし、その結果を論文「Polynomial decay of correlations for intermittent sofic systems」に発表し、Discrete and Continuous Dynamical Systems(Series A)に掲載予定である。
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