研究概要 |
1.材料力学,地球物理等の分野では多くの非等方弾性体が扱われる。一方,非等方弾性体方程式は,最大21個の独立成分をもつ弾性テンソルをパラメターにもち,複雑な方程式系となる。Strohformalismは,非等方弾性体方程式に隠された純粋な構造を見出すものである。このformalismを基礎にして,非等方弾性体方程式を組織的に扱うことが可能となリ,波動伝播の解析,逆問題への応用等の研究が,ここ数十年,国内外で活発に行われてきた。このような状況の下,Strohformalismを総括することは,応用数学のみならず力学,数理工学の分野の今後の研究に大いに資すると考え,Strohformalismの本質を簡明に導入し,静弾性力学,動弾性力学への応用を最近の研究結果も交えて解説する論文を完成させた。(欧文誌Journal of Elasticityのspecial invited expositionおよびSpringer社からの洋書として出版された。) 2.弾性波動方程式の解のうち,自由境界表面に振幅が集中している弾性表面波(Rayleigh 波)に関し1て研究を行った。弾性体表面でのRayleigh波の挙動を調べることで,弾性体の非等方性を決定することは,30年以上前より研究されてきた地球物理,材料力学での大きな問題である。本研究では,Strohformalismをもちいるsystematicな方法により,弾性体を伝わるRayleigh 波のpolarizationvectorにおいて,境界表面に平行な成分と表面に垂直な成分の比であるpolarizationrati,および それらの成分間の位相差であるphaseshift に,弾性体のもつ非等方性(残留応力項を含む)の情報がどのように含まれているかを考察した.具体的には,弾性テンソルの摂動に完全な非等方性を仮定し,上記物理量の一次摂動公式を導出した。前年度に導いたRayleigh波の速度の一次摂動公式とあわせ,以上の結果はRayleigh波観測により非等方性を決定する逆問題に方向性を示唆することで重要である。
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