擬確率的方法の仕組みは次の2段階に分けられる。まず、(1)任意の巨大な離散構造が擬確率的構造であらわされること、そして(2)擬確率的構造は確率的性質(対応する確率構造が高確率で満たす性質)を満たすこと。これらによって、任意の巨大離散構造に対して、所望の性質を調べることができる。最近、離散構造体の代表例であるグラフだけでなく多くの離散的モデルに対して、(1)が成り立つことがわかってきた。(2)においてどれだけ良い性質が示せるかどうかに、応用上の鍵がかかっている。平成20年度も前年度と引き続き、(1)と(2)のバランスをよく考えた上で、超グラフを主な台として、応用をかんがみながら、周辺技術の基礎整備にはかった。関数解析やエルゴード理論からの手法に加え、数学基礎論ないしはモデル理論を応用した超準解析の手法が効果的に使用できることがわかった。これにより、Szemerediの定理やその関連する様々な定理の別証明ができ、従来のものよりも初等的では無いものの、異なった視点からの面白い知見が得られる。これらの技術を改良することで、ある意味でそれらよりさらに強い結果も得られることがわかってきた。この方面の研究は、より広範な分野の視点や手法を取り込む傾向にあるので、筆者が良く慣れている特定の手法を固定せず、筆者の従来の専門外であるような専門領域へも積極的に研究の幅をより広く深く考えていく予定である。
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