研究概要 |
1.全順序のはいった2つの順序加群H,Kに対し,辞書式順序積H×Kが定義されるが,Hに余分な定数や関係の構造がある場合にもある程度自然な順序積が考えられる。HとKそれぞれで成り立つ論理式の集合(理論と呼ぶ)を生成する公理系が与えられたときに,この順序積構造の理論が具体的に公理化できることはHとKにおける存在記号消去が可能という仮定のもとで証明されていたが,この仮定なしに,HとKの理論からこれらの順序積構造の理論が具体的に公理化できることを示した。 2.グラフ構造に対し,「頂点の個数-辺の個数」を前次元と呼び,どの誘導部分グラフに対しても前次元が0以上になるような有限グラフの全を考えると,これらをうまく貼り合せてジェネリック構造と呼ばれるよい性質をもった構造が構成できる。「辺の個数」に実数の重みをつけて引いたものを前次元として同様のクラスを考えてもジェネリック構造が構成できる。重みが無理数の場合には,ジェネリック構造の理論が任意存在形の論理式で公理化できることが知られていたが,重みが有理数であっても,ジェネリック構造の理論が任意存在形の論理式で公理化できることの証明を行った.証明自体は過去に得ていたが,改良した証明を国際会議で発表し,また,改良した証明でJournal of Symbolic Logicに論文の掲載が決定した。 3.自然数全体をモデルとしてもつ具体的な公理糸に対し,コルモゴロフ複雑性から決まる定数と計算の停止性問題から決まる定数がある。Raatikainenはこれらが同じであるという主張をしていたが基準となる汎用コンピュータの選び方によりこれらは異なることを明確に示した。また,任意形の命題で差のつく上記のような2つの理論があるとき、これらの定数が異なるように汎用コンピュータを選べることも示した。
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