研究概要 |
体のクラスにおける代数的閉体を一般化した概念が「存在閉モデル」である。一階の公理系Tに対し,TのモデルMとその自己同型σの組(M,σ)のクラスを考える。Tが不安定の場合に,この構造のクラスにおける存在閉モデル全体のクラスは一階の公理系をもたない場合がほとんどという結果を過去に得ているが,TのモデルM0とその自己同型sを一つ固定し,(M0,s)の拡大だけに制限した部分クラスを考えた場合どうなるかという問題について研究し,次の結果を得た。 1.M0に定義可能な推移的順序<があり,a<s^n(a)となるM0の要素aと自然数nが存在する場合,(M0,s)の拡大クラスにおける存在閉モデルのクラスは一階の公理系をもたない。 2.次の場合,M0の自己同型sをどのように与えても,(M0,s)の拡大のクラスにおける存在閉モデルのクラスは一階の公理系をもたない。(i)M0がランダムグラフの場合。ジェネリック構成法により得られる組み合わせ論的な不安定構造についても同様のことが言えるようである。(ii)M0に全順序が定義できる場合。(iii)M0がn分木の場合。(iv)M0が無限分岐木の場合。 3.M0が有限分岐木で,深くなるほど分岐の数が多くなる場合,自己同型sをうまくとると,存在閉モデルのクラスが一階の公理系をもつ。自己同型sとして,各レベル(根からの郷里)での軌道の大きさが次第に大きくなるようなものをとればよい。Witt Vector上でWitt-Frobenius写像を考えた構造(離散付値,剰余体,値群も構造と考える)もモデル完全であることが知られているが,状況に類似性があり,何らかの一般化が期待される。
|