研究概要 |
本研究の目的は,時間遅れをもつ線形微分方程式系から導かれるローラン多項式環上の行列方程式の解の存在条件と解を計算する方法を検討し,その結果を応用して元の時間遅れをもつ線形微分方程式系の定性的性質を解析することである.実有理関数を係数にもつローラン多項式に対し、ある変換を施すと複素数上の整関数になるような多項式は時間遅れをもつ線形微分方程式を表す微分差分作用素と考えることができる。このようなローラン多項式の全体のなす環はベズー整域となることが分かるが、このローラン多項式環上の行列は、ユークリッド整域上の行列のようにスミス形をもつことも示すことができる。このローラン多項式環に正定性および半正定性の概念を導入し,時間遅れをもつ線形微分方程式系の安定牲とその微分方程式系が定めるローラン多項式環上の代数リャプノフ方程式の正定解および半正定解との関係を調べた。正定性(半正定性)の定義などについて,さらに考察する必要があると考えられる。また,ローラン多項式には次数が導入されるが,構成された代数リャプノフ方程式の解の各要素の次数はできるだけ抑えられることが望ましいため,構成法などについて引き続き考察が必要であると考えられる。
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