研究概要 |
昨年度,一昨年度は,整数係数超平面配置に関する有限体法の一般化を行なった.今年度はそこで得られた一般的な結果を,統計科学において現れる具体的な超平面配置に応用することが目的であった.また計量心理における展開モデル(理想点モデルともいう)のランキング・パターン(生成されるランキングの集合)の問題についても,自明でない最大次元の場合(codimension oneのケースと呼ぶ)について解決することを目的とした.幸いこれらは目標通り,今年度,以下のように達成することが出来た. まずcodimension oneの展開モデルのランキング・パターンが,braid arrangementのsliceによるランキング・パターンとして実現されることを示した.そしてbraid arrangementのsliceによるランキング・パターンたちの全体が,ある整数係数超平面配置(all-subset arrangementと呼んだ)の部屋たちの全体と1対1に対応することを示した. その上で,braid arrangementのsliceによるランキング・パターンたち(すなわちall-subset arrangementの部屋たち)のうち,codimension oneの展開モデルのランキング・パターンと対応するものとしないものとを特定した.それにより,codimension oneの展開モデルのランキング・パターンの個数を求めることが出来た.この個数はall-subset arrangementの部屋の数を用いて表されるが,この部屋数を求めるためには,各次元ごとにall―subset arrangementの特性多項式を具体的に求める必要がある.昨年度,一昨年度に行なった有限体法の一般化の結果を用いることにより,これらの特性多項式を(計算量の点で可能な範囲で)実際に求めることが出来た.以上の結果は,Ranking patterns of unfolding models of codimension one, H. Kamiya, A. Takemura and H. Terao, METR2010-05としてまとめられている.
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