研究概要 |
本研究の主な目的は,重定・川崎・寺本(1979)によって提出された競争関係にある2種の個体群密度の動態を記述する反応拡散方程式(2種競争系)に対して,定常解や周期解などの解の存在・安定性,及び大域的な解構造を調べることである. 昨年度から,生物の住処をある球の内部とし,求める解を球対称解に制限した最も単純な場合について,数学的な手法と,数式処理や区間演算などの数値的な手法を相互補完的に用いて,定数定常解の周りでの局所的な解構造の研究を行っている.本年度は,昨年度後半に見つかった証明の不十分な箇所の修正に多くの時間を費やした.修正ができた部分に関しては,いくつかの研究集会などで研究発表を行うとともに,その研究成果は学術雑誌に掲載される予定である. 定数定常解の周りでの局所的な分岐構造は,ベッセル関数を用いた関係式により表現することができる.ベッセル関数に関してはこれまでに多くの研究があるが,局所的な解構造を決定するために必要な情報を見つけ出すことができなかった.そのため,ベッセル関数のある性質を重点的に調べ,あるパラメータ領域において局所的な解構造を決定することができた. 本研究で得られたベッセル関数に対する性質は,2種競争系だけでなく,一般の反応拡散方程式においても,定数定常解の周りでの局所的な解構造を決定する際に有効である.また,大域的な解構造の決定には至っていないため,これについては今後の課題としたい.
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