1.Wiener過程が1次元である確率微分方程式に対してWeakオーダー1あるいは2のRunge-Kutta型陰的数値スキームを導出した。ここで、Weakオーダーは近似解の収束の速さ(オーダーが高いほど速い)を表し、「陰的」は、計算コストはかかるが数値的安定性が優れていることを意味する。本研究の成果をまとめた論文は18年度に投稿済みであったが、19年度に新たな成果を加えることによって、その掲載が決定した。 本研究課題では、一般化されたRunge-Kutta法の新しい型とその解析理論を提供し、確率微分方程式に対するRunge-Kuttaスキームを導出する為の基本的枠組みを与える、上で述べた19年度成果は、この枠組みの妥当さを示す上で非常に意義がある。 数理解析に対する要求の高まりとともに、確率的な振舞いを考慮に入れた数式モデルは今後様々な分野に広がることが予想される。時刻を固定するとき確率微分方程式の解は確率変数となるので、その近似として分布の近似や任意のモーメントの近似を求めることは極めて実際的である。このような近似を必要とする分野として、ファイナンスが挙げられる。上で述べた数値スキームは、これらの分野に出現する確率微分方程式の漸近的な性質を保持した近似解を与えるという意味で、重要である。 2.Wiener過程が多次元である確率微分方程式に対して、非確率項だけが陰的であるDrift-implicit Runge-Kutta法について考察し、Weakオーダーが1のものを導出した。本解法は、Wiener過程が多次元であっても数値的安定性に優れた解法を導き得る証拠を提供し、Weakオーダー2のDrift-implicit Runge-Kutta法を導出する為の手がかりを与える。
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