研究概要 |
1.Wiener過程が1次元である確率微分方程式に対する陰的確率Runge-Kutta法を導出した.離散時間の刻み幅hが十分小さいならば,これらの解法による任意のモーメントの近似誤差はhまたはhの二乗に比例する(それぞれ,弱い意味で1次または2次と言う).これらの解法はドリフト係数と拡散係数の両方について陰的であり,平均二乗の意味でA-安定(任意のh>0で絶対安定)を達成している.本研究成果をまとめた論文が20年度に印刷された. 2.Wiener過程が多次元である確率微分方程式に対しても同様に両係数について陰的解法を考え得るが,確率Runge-Kutta法の段数を必ずしも小さくできるわけではない.加えて,Wiener過程の次元が高くなるにつれて計算コストが急激に増大する.そこで,ドリフト係数についてのみ陰的な確率Runge-Kutta法を考えた.しかし,弱い意味で2次で,A-安定な解法が得られなかった. 3.すべての問題においてA-安定性が必要なわけではない.その一方,常微分方程式に対するChebyshev法は陽的解法でありながら,大きな絶対安定領域を持ち得る.そこで,確率Runge-Kutta法にChebyshev法のアイディアを取り入れ,平均二乗の意味で大きな絶対安定領域を持った陽的解法の導出に取り組んだ.その結果,弱い意味で1次なら,そのような確率Runge-Kutta法が得られる可能性は高いとわかった.2次のものについても考察し,見込みがありそうだとわかった.
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