本年度の目的の一つは、集合論のモデルに依存すると思われる順序数のこつの積の、可算パラコンパクト性と正規性を中心に、二つの積の様々な位相的性質と集合論モデルとの関係を考察することであった。この目的に関連し、順序数の二つの積の可算パラコンコンパクト性と正規性の考察を応用して、順序数の空でない閉集合やコンパクト集合からできるいくつかの超空間の可算パラコンパクト性と正規性について調べることができた。具体的には次のことがわかった。 定理 順序数αに対して、αの空でない閉集合全体の集合にVietorisの位相を入れた空間を2^αと表す。αの空でないコンパクト集合全体の集合に2^αの部分空間の位相をいれた空間をK(α)と表す。この時: (1)2^αが可算パラコンパクトであることの必要十分条件はcfαが可算でないことである。 (2)K(α)は常に可算パラコンパクトである。 (3)K(α)が正規であることの必要十分条件は、cfαが非可算ならば、cfα=αとなることである。 ここでcfαはαのcofinalityを表す。特に(3)の証明に、超空間の理論に始めて集合論的手法elementary submodelのが使われていることは特筆すべきことである。この証明のelementary submodelを使わない通常の証明はまだ見つかっていない。 また、次元の理論で正規性と密接な関係を持つrectangular性が、順序数の積の理論では可算パラコンパクト性とより密接な関係があることが神奈川大学の矢島幸信氏との共同研究でわかった。 定理 AとBを順序数αの部分空間とするとき、積空間AxBがrectangularであることの必要十分条件は、それが可算パラコンパクトであることである。
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