研究概要 |
解析的構造のモデル理論として,解析的ザリスキー幾何についての研究を継続した. 本研究計画の最終年度として解析集合の性質をモデル理論的見地から研究するために,「無限小」の概念に着目した.当初,「ひとつの解析的ザリスキー構造の初等拡大は再び解析的ザリスキー構造になる」との結果がすでに他の研究者によって得られているとして,「無限小」概念の研究に着手した.しかし,前述の結果が得られている訳ではなく,また前述の主張は一般的には正しくないことも判明した. このような事態により,研究計画そのものの進捗が大幅に遅れてしまったが,否定的事実にせよ判明したのは今後のことを考えると,それなりの意味はあったものと言えよう. 年度末に向けて,「量子2-トーラスと呼ばれる数学的構造が解析的ザリスキー構造になる」というB.Zilber教授の予想の証明に向けて研究を集中させている.残念ながら,年度末までに終了させることは出来なかったが,上記失敗例とは異なり,オックスフォード大学の研究者との共同研究として結実させる予定である. 量子2-トーラスが解析的ザリスキー構造であることが証明されれば,非可換な解析的ザリスキー構造の非常に重要な例になっている.
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