数学基礎論の一分野であるモデル理論において有名な未解決予想としてLachlan予想がある。この予想は理論の可算モデルの個数に関する予想であるが、もし反例が存在するならば、その反例はジェネリック構成法で作られるのではないかと多くのモデル理論研究者は考えている。そこでまずジェネリック構造における独立性などの概念を解析し、その結果を数理解析研究所講究録にまとめた。また、筑波大の坪井氏、神戸大の桔梗氏と強い融合性をもつジェネリック構造の研究をまとめ、その結果はJournal of Symbolic Logicに掲載予定である。一方、非常に強い条件の下ではジェネリック構造においてLachlan予想は正しいことがわかり、その結果を2008年8月に開催されたModel Theory Summer Meetingで発表した。その際、筑波大の坪井氏、神戸大の桔梗氏を含む国内のモデル理論研究者とこの結果について研究打ち合わせをおこなった。その後、仮定していた強い条件をわかりやすい形に整理し、その結果は2008年9月に開催されたThe10^<th> Asian Logic Conferenceで発表された。その際、この集会の参加者であった延世大学のByunghan Kim氏から有益なコメントを得た。そしてこの結果をさらに改良し、二つの条件、「部分グラフに関して閉」と「自由融合性」の仮定の下、ジェネリック構造においてLachlan予想は正しい、という結果を得た。この結果は2008年11月に開催されたRIMS研究集会で発表され、それをまとめたものは数理解析研究所講究録に掲載予定である。この結果は、ジェネリック構造における可算モデルの個数に関する結果が存在しない現時点では、ある一定の意義があると思われる。また、2009年2月に開催されたモデル論研究集会では先の結果とは違う仮定のもとでジェネリック構造においてLachlan予想が成り立つことがわかり、現在その方向での研究が進行中である。
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