本年度は、グラフと被覆グラフのゼータ関数について、以下の結果を得た。 (1)無限グラフの一種であるfractal graphのBartholdiゼータ関数を導入し、有限グラフのゼータ関数における手法を使って、von Neumann環の作用素に関する行列式を用いる、行列式表示を与えた。論文として、Electronic Journal of Combinatoricsに掲載された。 (2)digraph Dについて、新たなweighted Bartholdiゼータ関数を定義し、その行列式表示を与え、第2種のweighted Bartholdiゼータ関数と一致することを示した。論文として、Discrete Mathematicsに掲載された。 (3)hypergraph HのIharaゼータ関数について、edge matrixの変形による新しい行列式表示を与え、Stormの定理の別証明を与えた。また、HのBartholdiゼータ関数について、edge matrixの変形と、Hのoriented line graphのPerron-Frobenius行列による行列式表示を与えた。。論文として、Electronic Journal of Combinatoricsに掲載された。 (4)digraph Dについて、(2))とは異なる、別の新たなweighted Bartholdiゼータ関数を定義し、その行列式表示を与え、第1種のweighted Bartholdiゼータ関数と一致することを示した。論文として、Far East Journal of Mathematical Sciencesに掲載された。 (5)quantum graphの概念である、グラフGのscattering matrixのある行列式を、GのLaplacianの特性多項式で表示するSmilanskyの公式のGのregular coveringへの拡張を考え、GのBartholdi型ゼータ関数の行列式表示を用いて、Gのregular coveringのscattering matrixのある行列式の分解公式を導いた。また、Gのregular coveringのscattering matrixの重み付き版についても、その分解公式を得た。論文として、Discrete Mathematicsに掲載された。
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