有限鏡映群、特に対称群、に付随する自然な次数表現の一つであるガルシア=ハイマン加群の次元の一致を考え、ある特別な場合にその表現論的解釈を与えることに成功した。また、それに伴い、2変数のグリーン多項式のべき根での再帰式を組合せ論的に記述するため、マクドナルド多項式の冪根での挙動に関する定理の証明に成功している。 以上の2点が平成19年度に得られた主な結果である。 対称群は有限鏡映群(あるいはすべての有限群)のなかで最も基本的な群である。ガルシア=ハイマン加群は、スプリンガー加群を部分加群として含む2重次数付き加群であり、非常に自然かつ重要なものである。筆者は平成18年度までの研究で、スプリンガー加群の「次元の一致」とよんでいる組合せ論的性質を、誘導表現を用いて表現論的に把握することに成功しているが、ここではその結果をガルシア=ハイマン加群の場合に発展させることを目標としており、一部特別な場合に次元の一致の表現論的解釈を得ることに成功した。また、この問題を考察する際に基本的となるのが、マクドナルド多項式の冪根における挙動であるが、これに関して「分解公式」および「プレシズム公式」とよばれる二つの公式の証明に成功している。これはホール=リトルウッド多項式に対して知られている同様の公式を、本質的に発展させており、今後この問題を一般の場合に考察する際に、その根本を支える定理である。 これらの結果は、今後、一般のガルシア=ハイマン加群に対しても同様の結果を証明する際し、その基本的な道具と大きな手がかりを与えている。のみならず、スプリンガー加群の場合との比較は、マクドナルド多項式のさらなる多パラメータ化の存在を示唆しており、今後の新たな研究への大きな足がかりを与えてくれている。このことは、現在、ラスクーのフランス学派が押し進めている「非可換対称関数論」における、マクドナルド多項式の非可換化との関連を考察するに際して際立った着眼点を与えている意味で、今後研究を発展させていく上で非常に重要な鍵を握っていると言わざるを得ない。
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