研究概要 |
平成19年度に発表された主要研究実績は,積分変換に関するペーリーの不等式である。研究の動機は古典的なペーリーの不等式が,特殊な場合としてフーリエ変換を含む有用な積分変換であるハンケル変換に対して成り立たないだろうかというものである。古典的なペーリーの不等式とは,実ハーディ空間に属する関数のフーリエ級数展開を考えたとき,第n番目のフーリエ係数の絶対値の2乗をアダマール間隙を持つnに渡って総和したものは収束し,その和は元の関数の実ハーディ空間のノルムの2乗で押さえられるというものである。我々は,この古典的なパーリーの不等式が,ハンケル変換に関して類似の形で成り立つことを示し,Hokkaido Math.J.に発表した。 今年度研究し,次年度成果をまとめることが出来ると考えられる研究実績は,エルミート展開とラゲール展開に関するハーディの不等式である。これは,古典的なハーディの不等式を,エルミート展開とラゲール展開に対して考察したものである。古典的なハーディの不等式とは,実ハーディ空間に属する関数のフーリエ級数展開を考えたとき,第n番目のフーリエ係数の絶対値を|n|+1で除したものを,すべてのnに渡って総和したものが収束し,その和は元の関数の実ハーディ空間のノルムで押さえられるというものである。古典的な場合は,実ハーディ空間より広い可積分関数の空間では成り立たない。ところが,エルミート展開とラゲール展開に対しては,可積分関数の空間に関して成り立つという注目すべき結果が得られる見通しがたった。次年度成果としてまとめたい。
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