研究概要 |
当初の計画に沿い、微分及び差分方程式に関する研究課題の遂行する目的で、本研究代表者はフィンランドに渡航し、Joensuu大学においてI. Laine教授とR. Korhonen氏と共同研究を行った。Korhonen氏及びR. Halburd教授との共同研究である差分作用素に対応する正則曲線の値分布論の研究について最初の成果がまとまり論文を投稿した。また、成果の一部を研究代表者や共著者で口頭発表を行った。これまで有限位数の有理型函数しか扱うことができなかったが、本研究ではある種の制限のもとに無限位数函数および正則曲線の値分布までを扱うこと可能になった。さらにこの制限がそれ以上の改良ができない最良な評価であることについて例を与えて示した。これらの拡張並びに応用も含めて共同研究を継続中である。またHalburd教授らが発表したトロピカルNevanlinna理論について興味を持ち、値分布論についてのサーベイを依頼された函数論サマーセミナーにおける講演でそれを紹介するとともに、その拡張の可能性を模索した。微分方程式に関する研究のために招聘したLaine教授とともに、考察する対象をトロピカルな有理型函数からより広い対象に拡張するために、数理物理学者などが考察しているいくつかの基本的な超離散方程式に対する区分的に線形な連続関数解に関する研究を行った。これにより、トロピカルな意味での代数型函数をどのように定義すればよいかについての知見を得ることができた。これらの函数を対象にHalburd教授らによる理論を拡張できることを現在共著論文としてまとめている。連携研究者の森正気教授はW. Lin氏との共同研究により角領域での有理型函数に対する一意性定理の精密化を、下村俊教授は擬Painlev\'e性をもつ2階非線形微分方程式やP_III, P_vの値分布を、また石崎克也教授はある種の函数方程式の満たす有理型函数の合成の意味での分解可能性をそれぞれに研究して新たな知見を得た。これらの成果はそれ自身ももつ重要性は当然ながら、本研究課題遂行のための有益な示唆と刺激という意味でも重要な成果である。
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