調和解析学などを用い、非圧縮性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式、Euler方程式および熱対流方程式の解の性質について研究した。非圧縮性Navier-Stokes方程式の研究が関数方程式分野においてきわめて重要な位置を占めていることは、この方程式に関する未解決問題がクレイ研究所からミレニアム問題の一つにあげられていることからも明らかである。私は、平成19年度において、Navier-Stokes方程式の時間周期解の一意性を適当な関数空間上で証明した。これまでは、粗っぽく言うと、時間周期解に関して、同じデータに対し二つの解が両方小さい場合には、この二つの解が一致することが知られていた。私は、smallnessの仮定が一つの解に対してのみ課されている場合でも一意性が成り立つことを示した。(Math.Z.に掲載予定。)また、平成19年度において、半空間上の粘性のある熱対流方程式を記述するBoussinesq方程式に対し、空間遠方で減衰も増大もしない初期速度場と境界条件(境界上の熱源)を与えた場合の時間局所可解性を負ベキのBesov空間を用いて証明した。(投稿中。)さらに、同様に遠方で減衰しない初期条件に対するEuler方程式の可解性に関して、2次元全空間上において、初期渦度がlog(1/x+e)程度の特異性を持つ場合の大域可解性は証明済みであるが、この解の一意性は未解決であった。私は、共同研究者とともに、log(log1/x+e)程度の特異性を持つ場合に対しては、一意性も成り立つことを証明した。(投稿中。)
|