私は、調和解析学等を用い、非圧縮性粘性流体の運動を記述するNavier-Stokes方程式、非圧縮性非粘性流体の運動を記述するEuler方程式、および熱の影響を考慮にいれた非圧縮性粘性流体の方程式である熱対流方程式(Boussinesq方程式)の解の一意性と解の性質について研究した。非圧縮性Navier-Stokes方程式の研究が関数方程式分野においてきわめて重要な位置を占めていることは、この方程式の未解決問題の一つがクレイ研究所からミレニアム問題の一つに挙げられていることからも明らかである。私は昨年度に、非有界領域におけるNavier-Stokes方程式の時間周期解の一意性を、適当な関数空間上で証明したが、平成20年度においては、同様の結果がBoussinesq方程式にも成り立つかどうか研究をし、部分的な結果を得た。この研究のためにはBoussinesq方程式のある種の共役方程式の可解性を示す必要があるが、平成20年度の研究でこれを証明した。さらに、Euler方程式に関して、共同研究者とともに、空間遠方で減衰しない初期条件のもとでのEuler方程式の解の初期値に関する連続性を証明した。さらにこの結果を利用し、初期条件が概周期関数であるとき、Euler方程式の解も各時刻で概周期的になることを証明した。
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