研究概要 |
平成21年度の交付申請書での研究計画は以下の通りであった。研究代表者一ノ瀬は、量子電磁気学のFeynman経路積分による数学的定式化の研究、Feynman経路積分の汎関数微分の研究及びローレンツゲージでのFeynman経路積分の研究であった。 研究の実施は概ね成功したが、未完成の部分もあった。以下具体的に記す。 一ノ瀬は、平成20年度に引き続き、物理で行われているFeynman経路積分による量子電磁気学の、数学的定式化の研究を行なった。物理で用いられている拘束条件を用い、十分大きな箱上で周期的な条件を置き、更に光子の振動数の高い部分を切断(紫外切断)するという仮定の下で、Feynman経路積分の収束を証明した(Rev.Math.Phys.に発表予定)。この研究は、量子電磁気学での経路積分の世界で初めての数学的結果である。 偏微分方程式の係数に関すう解の連続性を導き、これの量子電磁気学に対するFeynman経路積分への応用を行うことで、従来知られていた量子電磁気学に対するFeynman経路積分の結果の拡張を行った(Pseudo -Diff.Ops.に発表予定、London大学等で研究発表)。 Feynman経路積分の汎関数微分の研究において、区間[O,T]上のユークリッド空間内の連続関数についてFrechetの意味で微分出来ることを示し、更にこれが相関関数を与えることを示した。現在論文On a mathematical theory of the functional derivatives of the generating Feynman path integralとして雑誌Lett.Math.Phys. に投稿中である。 Rev.Math.Phys.に発表予定の論文では、クーロンゲージでの経路積分の研究を行った。続いてローレンツゲージでのFeynman経路積分の研究を行い、クーロンゲージでの経路積分との関係も明白にした。現在この研究は、論文A mathematical note on the quantization of QED under the Lorentz gaugeとして投稿準備中である。ローレンツゲージでの量子化は、物理学ではFaddeev-Popovの方法を用いるのが通常であるが、これの数学的正当性をあたえるのは現在大変困難な問題である。
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