研究概要 |
(1)可積分階層のFay型等式,(2)無分散可積分系の流体力学的簡約,(3)超対称ゲージ理論の背後の可積分階層などに関して成果を得た.この他に,分担者による量子差分系の研究や(可積分系との関係はまだ不明だが)同変コホモロジーの研究においても成果があった.(1),(2),(3)の概要は以下の通りである.(1)Fay型等式は可積分階層のτ函数が満たすある種の函数等式の総称である.ここではその中で特に微分Fay等式と呼ばれるものに注目し,それが可積分階層の補助線形問題の母函数的表現に他ならないことを示した(論文投稿中).関連してD(∞)型可積分階層の補助線形問題について新たな知見を得た(論文準備中).従来,微分Fay等式は無分散広田方程式を導出するための技術的道具に過ぎないと思われていたが,この結果によって,可積分階層の一つの基本的表現形式と見なせることがわかった.(2)種数0の普遍Whitham階層はさまざまな無分散可積分系を統合する普遍的枠組みである.この系に対して流体力学的簡約を考察した.この問題はすでにGuil,Manas,Martinez Alonsoによって論じられていたが,ここでは無分散広田方程式に基づいて,より完全な取り扱いを与えた(論文準備中).(3)5次元超対称ゲージ理論のインスタントン和はランダム平面分割の統計力学的分配函数と見なせる.この分配函数をフェルミオン表示し,フェルミオンから構成される量子トーラス代数を用いて,分配函数が1次元戸田階層のτ函数であることを示した(論文掲載決定).この量子トーラス代数構造からτ函数が満たす拘束条件(Virasoro拘束条件の量子トーラス版)を導出することもできると期待される(進行中の研究).
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