研究概要 |
1. KP階層の準古典展開(hbar-展開)をRiemann-Hilbert問題に基づいて全次数で考祭し,最低次の項(無分散KP階層の解)から出発して順次高次の項を構成する手順を与えた.戸田階層についてモ同様の結果を得た.KP階層のhbarに依存する定式化は従来おもに無分散極限の導出のために用いられてきたが,この結果によってそれ自体の存在意義が確認された. 2. Carlet, Dubrovin, Zhangが導入した対数的時間発展による1次元戸田階層の拡張を2+1次元拡張の観点から見直した.これによってMilanovが別の方法で見出した双線形形式を再導出し,その奇妙な構浩が2+1次元拡張の観点から説明できることを示した.1次元戸田階層の変形の一種であるAblowitz-Ladik階層に対しても同様の結果を得た. 3. Teoが2次元戸田階層に対して導入した一種の一般解(非退化解)の概念を種数0の普遍Whitham階層に対して拡張した.これによって,無分散可積分階層の普遍的枠組みと言うべき普遍Whitham階層に対しても一種の一般解が得ちれたことになる. 4. 昨年度の溶解結晶模型の研究に関して,熱力学極限を決めるRiemann-Hilbert問題の取り扱いに誤りがあることが判明し,再検討の結果として,正しい計算方法を見出した. 5.球面のHurwitz数やそのq変形の母函数を2次元戸田階層のタウ函数とみなして,それが満たす一般化弦方程式を考察し,その準古典(無分散)極限がLambertのW函数などによって記述できることを見出した.これは最近Eynardらにがランダム行列の位相的展開の方法によって得た結果を可積分階層の観点から説明することにつながると期待される.
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