米国テネシー大学数学科所属の共同研究者G. TodorovaとB. Yordanovとの共同研究を行い、次の結果を得た。全空間において、空間遠方にて劣臨界的に多項式減衰する摩擦係数と巾型非線形項を持つ、半線形波動方程式の初期値問題を考察し、その藤田型臨界指数問題の完全解決を果たした。摩擦係数が定数関数の場合には、世界中多くの研究者によって、その対応する半線形初期値問題の藤田型臨界指数問題は研究され尽くして来たようだが、その摩擦係数が空間あるいは時間に依存した場合の同様な問題には、これまでの方法が無力であり、新たなアイデアの登場が切望されて来た。今回は、変数係数の線形の波動方程式に対して共同研究者がこれまでに開発した新しい重みつきエネルギー法を、さらに非線形問題について対応できるように工夫して、所与の結果を得るに至った。考察のポイントは、如何に劣臨界的な摩擦項の存在から来る、当該方程式のいわゆる"拡散構造"を抉り出すか、ということにあった。これらの結果を導出するにいわゆる巧みなMultiplier法を適用しているので、当該結果はいわゆる外部混合問題などにも適用され、これまで研究の空白地帯であった、非有界領域上の方程式についての新たな境地を開発したとも言える結果である。また、科研申請時に掲げた当初の「研究の目的」の一部を達成したことにもなる。更に、摩擦係数が臨界的に振舞う場合への考察のヒントも得ることができ、今後の研究に繋げることが出来た。
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