連携研究者の谷口と行った二つの特異値を持つ構造有限型整関数の力学系についての研究成果をまとめた論文が「Computational Methods and Function Theory」に掲載された。特異値を二つもつ構造有限型整関数はの3次多項式、単純象眼指数関数、複素誤差関数のいずれかである。ミルナーが3次多項式について考察を行った。この考え方に従って研究を進めた。特にパラメータ空間の双曲成分の分類について考察した。その中でもcapture型と呼ばれる双曲成分について詳しく調べ、ある種のcapture型の非存在を示した。また、多くの例を構成することができた。これらをまとめて発表した。 さらに複素誤差関数の考察を続けた。この関数は特異値として二つの漸近値をもつ。この関数族はふたつの複素数をパラメータとして持つ。特にパラメータとして実数を考えた。このパラメータ空間における双曲成分とその境界における分岐について考察した。これらの結果をドイツ、ブレーメンで開催された研究集会「Aspects of Transcendental Dynamics」で発表した。 超越整関数の持つジーゲル円板について考察した。ジーゲル円板の境界は特異値の前方軌道の平方に含まれることが知られている。しかし、このことは特異値がその境界にあることを意味しない。多項式や有理関数の場合には特異値は臨界値だけであるが、超越整関数の場合には漸近値もありえる。特に漸近値とジーゲル円板の境界について調べた。さらに漸近値にはdirectなものとindirectなものがあり、これらとジーゲル円板の境界との関係を調べている。
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