研究概要 |
1.昨年度に続いて,特異点を持つ偏微分方程式の変換論について研究した。昨年度は,Briot-Bouquet typeの非線型偏微分方程式で,その特性指数が「ボアンカレ条件と非共鳴条件を満たす」場合に「それが簡単な形の偏微分方程式に変換される」ことを示している。今年度は「ポアンカレ条件は満たしているが非共鳴条件は満たさない」という場合を中心に研究した。そして,この場合にも,少し標準形は複雑になるが,やはり「方程式は簡単な標準形に変換される」ことを証明した。議論は,coupling方程式といわれる無限変数の変換の方程式を解くことによって実行される。今回のcoupling方程式では,方程式の係数自身に未知の部分を含まざるを得ず,そのために形式解を求める議論は格段に複雑になる。収束性の証明は,ポアンカレ条件を満たすので,昨年と同様の議論で実行できる。 2.応用として,「ポアンカレ条件は満たしているが非共鳴条件は満たさない」時にも,Briot-Bouquet typeの非線型偏微分方程式のすべての特異解が決定された。 3.Gevrey級の滑らかさを持つ非線型偏微分方程式の解のGevrey classでの解の正則性についての研究も行った。1992年の論文(Singular hyperbolic systems, VIII, J. Fac. Sci. Univ. Tokyo,39(1992),555-582)で線型偏微分方程式の場合に得た結果の非線型版の定理を得た。一般的な設定への改良の余地は残されているものの,非線型方程式に対して成功したのは,初めてである。
|