研究概要 |
1. 昨年度に続いて,Gevrey級の滑らかさを持つ非線型偏微分方程式のGevrey classでの解の正則性について研究した。1992年の論文(Singular hyperbolic systems, VIII, J. Fac. Sci. Univ. Tokyo, 39 (1992), 555-582)で得た線型偏微分方程式の場合の結果の非線型版である。昨年度は少し条件付きでの証明であったが,今年度の研究により,一般的な設定の下での証明に成功した。「適当なノルムを使えば,議論は,複素領域での漸近解析の問題(偏微分方程式の解が古典的な意味でゼロ漸近展開を持てば,Gevrey漸近展開の意味でもゼロ漸近展開を持つか?という問題)とまったく並行である」という性質に着目して実行される。複素領域での解析の有用性の証である。 2. 複素領域での非線型偏微分方程式の形式的べき級数解の総和可能性の問題を研究した。この問題は,ボレル変換により,合成積・偏微分方程式の研究に帰着される。今年度の研究により,「この合成積・偏微分方程式の構造は,Gerard-Tahara (Singular nonlinear partial differential equations, Vieweg, 1996)でのMaillet型定理の構造に酷似している」ことが明らかになった。この知見は,総和可能性の問題への新しい研究方法を示唆していると思われる。つまり,「Maillet型定理の改良を通して,合成積・偏微分方程式の結果の改良を行い,それをベースにして,偏微分方程式の形式解の総和可能性の問題にアプローチする」という研究方法がクローズアップされて来たと言えよう。
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