研究概要 |
消散項が時間にのみ依存し減衰する場合の消散型変数係数双曲型方程式についての特異摂動問題を考察した。消散型線形双曲型方程式に対する初期値問題の解の漸近挙動については消散項の減衰度により異なることが知られており、消散項の係数が臨界べき-1より大きい次数で減衰するときには消散項の効果は弱く消散項のない双曲型方程式の解に漸近し、臨界べきより真に小さい多項式次数で減衰する時には放物型方程式の解に漸近する。昨年度は臨界べきより真に小さい場合の特異摂動問題を考察し、パラメータを0に近づけたときの双曲型方程式と対応する放物型方程式の解の差のパラメータと時間減衰と含む評価を与えたが、今年度は、臨界べき、即ち、消散項の係数が-1次の多項式次数で減衰する場合の特異摂動問題を考察した。まず、消散型線形双曲型方程式の解と放物型方程式の関するパラメータに関する時間一様評価を示し、パラメータを0に近づけると消散型双曲型方程式の解が放物型方程式の解に近づくことを明らかにした。臨界べきよりも小さいときと異なり、2つの方程式の解の差の減衰がそれぞれの解の減衰より速くはならない。次に、この結果を応用し、臨界べきの消散項を持つKirchhoff型方程式の解と対応する放物型方程式に対し同様の結果を示すと同時に、それまで知られていなかった大域解の存在を示した。上記の結果は平成20年12月に研究集会「Linear and Nonlinear Waves,No.6」で報告した。
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