研究概要 |
研究代表者らは,血管新生や腫瘍の浸潤の数学モデルを解析するときキイとなる発展方程式[numerical formula]のゼローノイマン混合問題のエネルギー評価式を導くことで前年度まで行ってきた問題を一般的な枠組みで捉えなおし,さらにこれを、19年度Chaplain氏来日の折にもたらされた最新の腫瘍形成モデルに対し、この一般化された方法を適用し数学解析を行った。実際,走触性を基本としたAnderson-Chaplainによる浸潤モデルを非局所化した腫瘍の増殖の方程式は以下によって表される。(Gerisch-Chaplain2007) [numerical formula],[numerical formula],[numerical formula]ここで,非局所項[numerical formula],n:腫瘍細胞密度, m: MDE濃度, f, D_1, D_3:正の定数.このモデルは,重要な生命現象の一つである「細胞接着」よりもたらされ,走触性を基本としたAnderson-Chaplainによる浸潤モデルを局所的に含む形で上述の如く表わされる,この偏微分法的式系についてGerisch-Chaplainはコンピュータシミュレーションのみ行っており,数学解析はまだ行われていなかったので,我々はこの数学解析を行い,数学的妥当性を保証することに成功した.すでに得られた血管新生2モデルの数学的構造と腫瘍の局所侵潤モデルらとの関連性、同等性と相違点の分析を数学解析を中心に詳しく進め、同一の微分方程式のクラスに入ることを示すことで、同じ数学的構造とそれより類推した医学的意味づけ、Othmer-Stevensモデルから出発した統計力学的視点からの導出原理との関連について明らかにされ、こう言った総合的観点より血管新生及,組織浸潤,細胞接着という一連の生命現象についての数学的特徴づけがなされた。
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