研究概要 |
本年度は最終年度前年であるので昨年度までの成果を発展させ来年度の最終的な結果に向けて研究を推進する年度である。今年度は解析学関係図書,幾何学関係図書を数冊購入したほか,研究代表者の菊地は龍谷大学セミナーハウス,京都大学,愛媛大学,名古屋大学,神戸大学などで開催された研究集会に出席し,大阪府立大学教授壁谷喜継氏,龍谷大学教授四ツ谷晶二氏,愛媛大学教授内藤雄基氏らと研究連絡を行った。さらに早稲田大学大学院生生駒典久氏,大阪大学大学院生土井一幸氏,信州大学教授一ノ瀬弥氏に静岡大学を訪問してもらい函数方程式に関する最新の研究成果について情報提供してもらった。 今年度は昨年度から継続して一次増大度のエネルギーを持つ準線形双曲型方程式系のミニマイジング・ムーブメントを用いた研究を推進してきたが,とくにその主要な道具である勾配ヤング測度の研究が大きく前進した。エネルギー汎函数が一次増大である場合には適切な函数空間はソボレフ空間ではなく有界変動函数の空間(BV空間)となるため,従前のようなソボレフ函数に対する勾配ヤング測度の理論では対応できないため,有界変動函数に対する勾配ヤング測度の理論を開発する必要に迫られる。今年度の研究でソボレフ函数に対する勾配ヤング測度に対して知られている性質と類似の事実が有界変動函数に対する勾配ヤング測度で均質なものに対しても成立するということがわかってきた。さらに勾配ヤング測度を用いて一次増大度のエネルギーを持つ準線形双曲型方程式系の線形近似を確立させることが出来た。今後は,一般の勾配ヤング測度について同様の結果を導き出したいと考えている。
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