中桐は国内および海外の共同研究者と協力して、研究計画にある非線形発展方程式の最適制御問題とパラメータ同定問題の研究を行った。今年度は昨年度に加えてさらに新たな研究の進展があり、様々なタイプの移流拡散方程式系の制御同定問題および境界安定化問題について多くの成果を得た。以上の成果は国内での学会、研究集会びスペインでの国際学会で発表した。 1)中桐は海外研究者と協力して、変分法的取り扱いにより、減衰項をもつキルヒホッフ型非線形波動方程式に関する最適制御問題を研究した。加えて長期記憶を持つ等方的粘弾性体方程式に対し、現れる末知パラメータの同定問題を研究し、最適パラメータの存在と一意性および最適性の必要条件を導いた。 2)中桐は国内および海外研究者と協力して、強い減衰項をもつ非線形振動方程式の解の存存と外力や初期値に関するフレッシェ微分可能性とその連続性を証明した。証明法は従来と異なり、田邊の手法を用いて行った。我々は、そこでの研究成果にもとづき、4階の非線形波動方程式系に対する最適制御問題の研究を行なった。 3)中桐は海外研究者と協力して、n-次元ファジーベクトル空間における半線形ファジー微分方程式の解の存在と一意性の問題を研究した。この系に対して線形部分の基本解を各レベル集合で構成しボルテラ型ファジー積分方程式に帰着して証明を行った。 4)中桐は国内研究者の協力を得て、非局所項と積分項をもつ移流拡散方程式系に対して、境界制御による安定化問題を研究した。その際、逆問題で有効な武器である変形公式を用いて、任意指数の指数安定性をもつ状態に導く制御則をバックステッピング法により構成した。加えて境界観測境界入力による安定化の問題に対しても、2層および3層移流拡散方程式系に対しスピルオーバ現象を回避するため2種類の有限次元オブザーバを導入し、有限次元安定化コントローラを構成した。さらにその数直解析を行った。
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