研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである。 1.前年度から引き続いて、Relative Cuntz-Pimsner環のゲージ作用に関するKMS stateの構成定理の証明を完成させた。これは以前発表した論文中の定理の一般化である。 2.前年度から引き続いて研究を進め、1の定理を用いて有限グラフから作られるC*環のKMS stateの分類を行い、逆温度がグラフのコアのペロンフロベニウス固有値より大きいときには、KMS stateとグラフの沈点が一対一に対応することを示した。1,2の結果は論文にまとめ投稿中である。 3.テント写像などの自己相似写像から作られるC*環のゲージ作用による固定点環上のトレースの分類の研究を行った。ある条件のもとで、固定点環上の極小トレースが、ハッチンソン測度から与えられるトレースと、分岐点のr軌道によって与えられるトレースによって分類されることを示し、数学会で発表した。コアのイデアルの分類についても研究している。 4.有理関数によるリーマン球面上の力学系から作られるC*環について、ジュリア集合上に分岐点が存在しないときには、コアが単純であること、また双曲型であるときには、コアのトレースが一意的であることを示し、数学会で発表した。ジュリア集合上に分岐点が存在する場合については研究中で、次年度に継続する。 5.複素力学系の軌道同形と分岐点の逆軌道の復元についての研究を進め、論文にまとめる準備を行った。 6.代数correspondenceから作られるC*環の単純性、純無限性の証明および具体例のK-群の計算についての論文を出版した。
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