平成21年度は以下の研究をおこなった。 1.前年度に引き続いて東北大学大学院理学研究科・教授・塩谷隆氏と共同でアレキサンドロフ空間においてリッチ曲率が下に有界の概念をビショップ・グロモフ不等式の形式で導入して、そのもとでラプラシアンの比較定理とリッチ曲率が非負のときに分裂定理が等長同形ではなく同相の形で成立することを示した。平成19、20年度実績報告において同様な結果が成立することを報告済みだが、さらにいっそう弱い条件で拡張可能できることが判明した。この結果はTohoku Mathematical Journa1に投稿中の論文の改訂の中でなされた。 2.エネルギー0の加法的汎関数を含めたFeynamn-Kac半群の漸近挙動やスペクトル半径のL^p-独立性についてDonsker-Varadhan型の大偏差原理を用いた成果を得た。漸近挙動についてはは加藤クラスの測度やポテンシャルによる結果しかなかったものをこのような局所加藤クラスかつ拡張された加藤クラスにある程度弱めた範疇で結果を得ることができた。これは前年度の研究成果である半群の倍フェラー性の性質を適用することでなされた。またスペクトル半径のL^p-独立性については土台となる測度の緊密性のみで導出することができ、そのことで既存の成果を拡張することに成功した。また摂動に与える測度にも緊密性をもつ加藤クラスを要請することでスペクトル半径のL^p-独立性の特徴付けがエネルギー0の加法的汎関数を含めた形で既存の結果を拡張することに成功した。これはG.DeLeva氏と金大弘氏と共同研究でJournal of Functinal Analysisに掲載予定である。
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